製造装置の操作パネル、設備監視、KIOSK、POS、交通システムなど、さまざまな現場で使われる産業用パネルPC(Panel PC)。

 一般的なPCとは異なり、産業用途では「CPUが速いか」だけで製品を選ぶことはできません。

  • どのくらいの画面サイズが必要か
  • 抵抗膜式と静電容量式、どちらのタッチパネルが適しているか
  • 制御機器との接続に必要なI/Oを備えているか
  • どの程度の演算性能が必要か
  • 電源条件はどうか
  • 防塵・防滴性や耐振動性が必要か
  • 将来的な拡張性をどこまで求めるか

 こうした条件を一つずつ整理することが、失敗しないパネルPC選びのポイントです。

 今回は、産業用SBC(Single Board Computer)を長年手掛けるICOP Technology社のラインアップを例に、産業用パネルPCの特長と選定方法をご紹介します。

公式製品ページ:
ICOP社製 産業用パネルPC


ICOPの産業用パネルPCとは?

 ICOP社製「産業用パネルPC」は、大きく次の4カテゴリーが展開されています。

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4つのカテゴリー

 特にPanel PC Seriesは、5.7、9、10.4、15インチなどのタッチ画面を展開し、柔軟なI/O拡張や堅牢設計を特長としています。5.7インチを除き、フロントパネルIP65も挙げられています。CE、FCC、VCCI、Vibration、Shockなどの対応も御座います。

 つまりICOPの特長は、完成されたパネルPCだけでなく、小型HMIからOpen Frame、LCDまで、装置設計に合わせて選択できることにあります。


1.迷ったらまず検討したい「Panel PC Series」

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パネルPC

 「装置に取り付けられる操作端末として使えるものが欲しい」という場合、まず候補になるのがPanel PC Seriesです。

現在のラインアップには、たとえば次のような製品があります。

高性能を求めるなら Intel Tiger Lake 搭載モデル

Intel Core i5-1135G7を採用したモデルでは、

  • PPC-090T-TGL:9インチ
  • PPC-104T-TGL:10.4インチ
  • PPC-150T-TGL:15インチ、抵抗膜式
  • PPC-150P-TGL:15インチ、静電容量式

などを選択できます。

 4系統のSerial、6系統のUSB、2系統のHDMI、2系統のDisplayPort、2.5GbE LANとGbE LAN、Audio、M.2などを提供しています。

そのため、

「Windowsを利用して画像処理やデータ処理までおこないたい」
「USB機器を多数接続したい」
「複数ディスプレイへの映像出力が必要」

といった比較的高性能な用途で検討しやすいシリーズです。


バランス重視なら Intel Elkhart Lake

もう一つの選択肢が、Intel Elkhart Lake J6412搭載モデルです。

 9~15インチクラスのラインアップがあり、15インチでは抵抗膜式のPPC-150T-EHLと静電容量式のPPC-150P-EHLを確認できます。2系統のSerial、6系統のUSB、2系統のHDMI、2系統の2.5GbE LAN、Audio、M.2などを提供しています。

Core i5クラスほどの演算性能を必要としない

  • 生産設備のHMI
  • データ入力端末
  • 設備監視
  • IoTゲートウェイ+表示端末

といった用途では、こうしたクラスから検討すると選びやすくなります。


2.省スペースな操作端末なら「HMI Series」

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HMI

「PCほどの性能はいらない。装置の操作だけおこないたい」

そんな用途では、「HMI Series」が候補になります。

 4.3インチの小型HMIを中心とし、Vortex86EX 400MHz搭載モデルではSerial、USB、LANに加えて、モデルによってCAN、GPIO、SD、eMMC、PoE、RFIDなどを選択できます。ICOPは同シリーズの特長として、低消費電力、低コスト、豊富なI/O選択肢を挙げています。

たとえば、

HMI-043T-EM4XX-BFC1

 では、4.3インチ抵抗膜式タッチパネルに加え、USB、LAN、CAN、eMMC、SD、RFIDなどを提供しています。

こんな用途に

  • 小型工作機械の操作画面
  • 搬送機器
  • センサー機器
  • 入退室・認証端末
  • 小型制御盤

 特にRFID対応モデルが用意されている点は、作業者認証と装置操作を一体化したい用途でも注目できます。


3.自社装置にきれいに組み込みたいなら「OpenFrame」

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オープンフレーム

完成品のパネルPCでは、

「筐体デザインに合わない」
「もっと自由に組み込みたい」

というケースもあります。

そんな場合に検討したいのが「OpenFrame」です。

 6.5、8.4、10.4、15インチなどのLCDサイズに対応し、ICOP SBCと組み合わせることが可能です。また、シンプルかつ汎用的な固定方式による素早い設置も特長です。

 製品ラインには、NXP i.MX8M Mini 1.6GHz、Vortex86EX2、Intel Braswell x5-E8000など、異なるアーキテクチャ/性能のモデルが確認できます。

したがって、

  • OEM装置
  • 専用筐体
  • KIOSK
  • 自社ブランド機器
  • 壁面・制御盤への特殊な組込み

 などでは、完成型Panel PCだけでなくOpenFrameを比較する価値があります。


4.LCDとSBCを自由に組み合わせるという選択肢

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LCD

さらに自由度を高めたい場合には、LCD Kitという選択もあります。

 5.7、6.5、8.4、10.4、15インチなどのLCD Kitが用意されており、抵抗膜式タッチパネルに対応。タッチコントローラーのインターフェースについてはPS/2、RS-232、USBに対応しています。

これは既存のSBCを活用したい場合や、

「表示部分とコンピューター部分を分離して独自の装置を設計したい」

というケースで検討したい構成です。


では、実際にどう選ぶ?

ここがパネルPC選定で最も重要なポイントです。

STEP 1:まず画面サイズを決める

「大きい方が見やすい」というだけで決めるのはおすすめできません。

4.3~7インチ

  • 限られた情報の表示や、ボタン中心の操作に適しています。

9~10.4インチ

  • 情報量と設置スペースのバランスを取りやすく、装置操作用HMIとして検討しやすいサイズです。

15インチ

  • 監視画面、グラフ、複数の操作項目など、より多くの情報を表示する用途に適しています。

STEP 2:抵抗膜式か静電容量式か

意外に重要なのがタッチ方式です。

抵抗膜式(Resistive)

 圧力によって入力する方式です。

  工場設備などで、

   ・手袋を着用する
   ・タッチペンで操作する
   ・大きなボタンを確実に押す

  といった用途では、有力な選択肢になります。

 Panel PC、HMI、OpenFrameなど幅広いモデルで抵抗膜式を採用しています。

静電容量式(Capacitive)

スマートフォンなどで一般的な方式です。

 操作感やユーザーインターフェースを重視するKIOSK、受付・案内端末などでは検討価値があります。

 15インチPanel PCでは静電容量式のPPC-150P-TGL、PPC-150P-EHLなどがラインアップされています。


STEP 3:CPUは「必要な処理」から逆算する

 CPUについては、単純な「速い・遅い」ではなく、アプリケーションから逆算することが重要です。

シンプルなHMI中心

 → Vortex86系などを検討

一般的な設備監視・データ収集

 → Intel Elkhart Lake J6412などを比較

Windowsアプリ、画像処理など高い演算性能が必要

 → Core i5-1135G7搭載Tiger Lakeモデルなどを検討

 ICOPの製品群はVortex86、Intel Elkhart Lake、Intel Tiger Lake、NXP i.MX8M Miniなど異なるプラットフォームを含むため、必要性能に合わせた選択が可能です。


STEP 4:I/Oは「数」だけでなく接続相手を書き出す

産業用PC選定では、CPU以上に重要になることがあるのがI/Oです。

選定前に接続予定機器を書き出してみましょう。

  ・PLC     → Ethernet / Serial
  ・バーコードリーダー → USB / Serial
  ・CAN機器 → CAN
  ・センサー → GPIO / Serial
  ・SSD     → M.2
  ・外部モニター → HDMI / DisplayPort
  ・RFID    → RFID対応モデルまたは外部USB等

 例えば、Tiger Lake搭載Panel PCにはSerial、USB、HDMI、DisplayPort、LAN、M.2など豊富なインターフェースが提供されています。

 一方、小型HMIではモデルによってCAN、GPIO、RFID、PoEなどを選べます。

「端子の数」ではなく、「何を、どこに接続するのか」を先に決める。

これがI/O選定で失敗しにくい方法です。


STEP 5:電源仕様も忘れず確認

工場や車載・設備用途では電源条件も重要です。

今回確認できたラインアップでも、

  • Tiger Lake Panel PC:12~24V Power Adapter
  • Elkhart Lake Panel PC:12~24V Power Adapter
  • PALD-090T:12~36V
  • QEC-PPCシリーズ:12~50VDC
  • 4.3インチHMI:モデルにより5Vまたは7~24V

など違いがあります。

 既存設備に組み込む場合は、性能を検討する前に供給電圧との適合をチェックすると、選定の手戻りを減らせます。


STEP 6:設置環境を確認する

最後に確認したいのが使用環境です。

 Panel PC Seriesについて、堅牢設計とともに、CE、FCC、VCCI、Vibration、Shock、フロントIP65(5.7インチ除く)対応です。

特に制御盤や工場設備では、

  • 水滴
  • 粉塵
  • 振動
  • 周囲温度
  • 電源条件
  • EMC
  • 24時間連続運転

など、一般的なオフィスPCとは異なる条件があります。

 なお、IP等級や認証、動作温度などはシリーズ全体で一律と考えず、採用予定の型式のデータシートで最終確認することをおすすめします。


用途から考えるICOP製品の選び方

最後に、選定の考え方をシンプルに整理すると以下のようになります。

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選定の考え方

 製品ページ上でもPanel PC Series、HMI Series、OpenFrame、LCDという4つのカテゴリーが明確に分けられているため、最初に「完成型PCが必要なのか、それとも装置への組込みを優先するのか」を決めると候補を絞り込みやすくなります。


まとめ:スペック比較の前に「用途」を整理しよう

 産業用パネルPCを選ぶ際、CPUやメモリーのスペックだけに目が行きがちです。

しかし実際には、

  ① 設置形態
  ② 画面サイズ
  ③ タッチ方式
  ④ 必要性能
  ⑤ I/O
  ⑥ 電源
  ⑦ 使用環境

の順で条件を整理すると、候補をかなり絞り込めます。

 ICOP社製 産業用パネルPC製品群は、完成型Panel PCから小型HMI、OpenFrame、LCD Kitまで用意されているため、「既製品を選ぶ」だけでなく「装置に合わせて構成を決める」という視点で比較できるラインアップと言えます。

 製品選定では、最終的に各型式の最新データシートで、OS対応状況、メモリー / ストレージ構成、動作温度、取付寸法、IP仕様、認証、供給電圧まで確認すると安心です。

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ICOP社製 産業用パネルPC